劇物って表現するのも変な話ではあるが、基本的には面白いけど表現が際どすぎて人を選ぶ類の作品ってことにしておく。言うほどではないのもあるかもしれないが。あんまり紹介っぽい文章ではないけれど、面白さだけは保証するのでなんか良さげなのあったら触ってみてください。
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全体として、ひたすらに気分のいい作品であった。個別のストーリー自体は結構好みがでるように思うが、少なくとも自分の趣味にはストライクなものばかりで非常に気分良く読み進められた。最初の方は割と投げ出されるような感じで始まるところもあり、物語に入って行くまでにちょっと時間がかかったものん、ギャグの飛ばし方などは結構良かったので、退屈ということもなかった。櫻達の足音の段までいくと話も一気に盛り上がり、そんなこと考えもしなかったものであるし。その後も熱いところはとことん熱いく、物語への引き込ませ方は凄まじかったと思う。
ギャグが好みと書いたが、会話のテンポ自体がそもそも好み。キャラも可愛かったりしたので個別ルートが退屈ということも少なかった。それどころか、個別が気に入り過ぎたが故に嫌なフラグが立ってる終盤のルート(言ってしまえばⅤの辺り)は読み始めを大分ためらっていた節さえある。読んで見たらそんなこと言ってる場合じゃねえって感じで最後まで駆け抜けたものなんだけれども。
作品の内容に触れると、芸術関係の話が物語全体に大きく横たわってはいて、何回っぽく作ってるところもあるにはある。ただ、難しいこと抜きに「幸福と才能」とか、「生への肯定」とか「何をもって幸福とするのか」とか、そのへんの話が好きな人にはぶっ刺さる内容になってると思う。演出周りだとまず音楽が良い。個別それぞれの別エンディングもよかったし、オープニングのインストアレンジをここぞってとこで流してくるやつはやはり良いもんだ。
ただ、部分的に雑だなって思ってしまう部分がないわけではない。細かくは個別のところで言うけれども。
以下ネタバレなど含む個別評とか。割とプレイ中に書いた文もあるのでちょっとごちゃってはいる。
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三巻が面白すぎたので書くことにしました。
一巻の内容をざっと言うと、史上最年少で将棋界のタイトル『竜王』を手に入れた主人公、九頭竜八一がとんでもない才能を持つ幼女、雛鶴あいを弟子に取るまでのお話。
正直なところ、途中までは完全にロリコン養成ギプス的な小説だと思っていた。なんせ、将棋界でプロを目指すなら幼い方が良いって考えがあるわけだから、プロを目指す目的を持ってるあいをヒロインに据えることはなんもおかしくない。プロ目指してる子は他にもたくさんいるわけで、自然と登場人物に幼女が増える。なんだこれは。ラノベ的表現に敬礼。
しかしながら、読ませてくる要素として、ひたすらに描写がかっこいいのである。正直なところ将棋には詳しくないので何がどうなっているのかはよくわからないが、周囲の驚く描写、指し手の気迫の描写等がこちらを掴んで離さない。一巻にあった主人公の連敗阻止の対局の後の記事も良かった。これはおれがそういう表現が好きなところもあるが。
しかし記者は敢えて断言しよう。 若き竜王は完全に復活した。 いや、さらにひとまわり大きく、強く、成長する途中なのだと。
白鳥 士郎. りゅうおうのおしごと! (GA文庫)
記事の結び部分。こういうのかっこいいと思ってしまう。
まあそんなこんなで続き買うか、ってなり、三巻まで読み、今に至る。
さて、本編を通して描かれているもの。一巻二巻は「師弟」が強い。一巻はちょっと寒いギャグが入ったり勢いで突っ走ってる節はあるものの。二巻は「師が弟子にできることはなにか」なんてことを綺麗に書いてたと思う。あと八一が天然ジゴロで朴念仁に過ぎる。頓死した方がいい。でも久しぶりにこの手の主人公見た気がするからわりかし楽しかった。でも頓死しろ。
で、三巻。ここは前ほど師弟が全面に出てこない。書かれるのは「才能」ってところ。どストライクなテーマなんで非常に楽しかったし。プロ将棋界を書く時点でいつかはやってくれるだろうと思ってたものをぶちまけてくれて気持ちが晴れやかと言ったらない。一巻二巻で疑問だったところを払拭してくれたところもある。
才能があふれる人間が溢れんばかりの力を振るうのは楽しいもので。
血の滲むような努力でその人間を追いかける姿は美しいもので。
才能がないと一蹴されようとも、好きだから、とその道を選ぶことは綺麗なもので。
そして現実は容赦なく叩き潰してくるのである。いや、八一が完全に才能で努力家を吹き飛ばした後にあいの二つの対局持ってくるのはもう流れとして完璧だった。あと作品全体の仕掛けにしても。もう完全にやられた。
こんなもん見せられたら既刊全て買ってしまうってなもんである。当初は五巻までだったそうだけど続くらしいし、ありがたいことこの上ないね。
待ちに待ったと言っていい古典部の新作である。もう五年は経ってる。よくぞ出てくれた。
なお私はミステリを好んで読むわけではなく、その知見もない。よってこの物語をミステリの側面から読むことはない。
さて、全体の構成としては「遠まわりする雛」に近い短編集だ。あちらが高校入学時からの1年間の物語であったのに対し、こちらは「ふたりの距離の概算」前後から同年の夏休み前までの物語となる。アニメだと「連峰は晴れているか」は1年の時の話だったし、伊原が漫研を辞めたのは概算より前のはずなので、まあそのあたり。正直連邦は収録のタイミング逃した感あるよね。
閑話休題。そして以下は軽めのネタバレにあたる。
今回の短編集。全体を通してみると、古典部の皆の掘り下げと、皆の変化を描いていると言えよう。掘り下げについては全員のスタンスを描いたクドリャフカの順番の続きともひとつ言える。古典部の皆の変化については、人物たちの関係性を書いていった概算とは異なり、今作は個人個人の変化が題材に上がると言える。 もっともな試みで、成功していると言っていいのではないか。これまでも折木の省エネ主義か徐々に変化している風を出すことはあったが、大まかに言えばその拡大版である。
そういうわけで、これまで古典部シリーズを楽しんで来た人間にとっては相当に楽しめるものである。人物たちの変化を見守るのっていいよな……。
というかそろそろシリーズとしてでしか成立しなくなってくるしナンバリングとか入れたほうがいいんじゃねえかなあとか、思わなくはない。割と前から言われてるけど、今作はそれが顕著。
以下は個別作品語り。ネタバレがどぎついので読んでない人は非推奨。
箱の中の欠落
選挙の票が不当に増やされてるって問題が発生。何故そうなったのかを考えてほしいと福部が折木に頼む話。
折木が焼きそば作ったりする。その後友人と2人でラーメン食ったりする。会話のテンポのよさについつい俺はこの空気に帰って来たなあ、という感じにさせられる。
一方そこで終わらないのが今回なので。先のスタンスの話をするのであればこれは折木のスタンスの再確認の話。そうである一方で、福部の変化の話の一端である。
といっても、今作は何故福部が変化したのかまでは描かれない。折木から見た福部の変化の話で、 一つのことに肩入れするようになったりとかってことに突っ込むシーンがあるのだが、折木も大概だけど、福部も自分のモットーに行動を制限されてる節がかなりあるよね。
あとこいつら人助け好きである。案外中学時代はよくある児童書ばりの活躍をしていたのかもしれない。
鏡には映らない
伊原が主役で視点。延々と嫌われて来た折木がなんで嫌われてたのかを知れる話。どっちかというとこいつは関係性の変化より。同時に伊原のスタンスがちょっと強めに出る感じ。
だんだん明確化してくるのだが、この折木って男さすがに他者の悪意からの耐性強すぎませんかね。いままでは結構善意に絆されてることが多かったので表には出てなかったけど。他者への興味のなさを割とギャグとして見てたけどここまでくると相当である。褒めてる。
もっと言うと折木は高校入学以来は「愚者のエンドロール」のときのような失敗こそすれ基本挫折してないんだよね。部員たちがなんらかの失敗をするクドリャフカの順番で、折木は唯一丸く収めた人だし。
本人の予感もそんときあったけども、折木の順番もそのうち描かれるんだろうなあとうきうきする。
脱線しすぎたので本編の方の話に戻る。折木のヒーローっぽさに拍車がかかる。割と身近な誰かが絡むと動くのかなこいつ。
会ったら嫌いになるでしょうって発言はつい笑ってしまった。
連峰は晴れているか
初出が結構前。けども折木のスタンス描写に一役買ってる。
前二つと総合すると多分自分が何もしなかったから誰かが不利益、不愉快を被ることとかは結構嫌うんだろうな。それが割と些細なことであれ。箱の中の欠落と、多分鏡には映らないでは誰かは直接関わってる相手ではないけどどうにかしようと動くし、今作は些細なことな上にもう会わない人だったろうけどもそんな風に動いたって感じなのかな。そう考えると「氷菓」の時に千反田の頼みを人海戦術を使えで一蹴しようとしたのは相当らしくないってことになるけど。
私たちの伝説の一冊
伊原視点再び。ついでに折木の中学時代の読書感想文が見れる。この読書感想文が解決の糸口になるけども、折木の出番はそれくらい。メインは伊原と福部の話。もっと言うと概算でさらっと書いてた伊原が漫研を抜ける際の顛末である。 まあこの辺はあの時点での折木が知らない以上伊原の視点にならざるを得ないのかもしれない。
伊原の物語は多分ここからで、転機でもあるのだろう。すごい微笑ましい。なまじ行動力があるばかりに他人の面倒見ていることがなくなって、これからは自分のために行動していくようになるんだろうな、と。
ところで、伊原が描く漫画に対して何か言う人が居なかったせいであんまり明らかにされていないのだが、彼女の漫画への評価が初めて出た話でもある。正直予想より強かったってのは否めない。謙遜もいいけど自覚もしろ。
あと福部が頑張ってた。彼の場合「クドリャフカの順番」で出した結論は呪いじみてたし、それを吹っ切ったんだろうなあ。今一つ詰めきれないのはらしいっちゃらしい。
長い休日
ここまで影の薄かった千反田のターン。あと折木が朝飯を作る。
内容としては折木のモットーがどうして生まれたのかって話。割と最近はこのモットーに制限されている節もあるのだが、別に根っこから省エネな人間では無いことが一応判明する。結構人助け好きな人間だったと。ちょいちょい見せてたイケメンっぷりはこっちの側面か。
てかちょいちょい思ったけど折木くんかなり外堀埋まって来てるよね。いやそういう風に考えられる程度の表現しかしてないとも言えるのだが。周囲に遊ばれてる感すげえというか「わかってるわかってる」感凄い。
でもってこれは折木の過去の挫折の話でもあったりするし。
いまさら翼と言われても
千反田のターン二つ目であり折木のターン。折木が冷やし中華を作って急いで食う。
折木の外堀が埋まる二回目。これで親友と叔母さんに面識が出来たな! やったな! 完全に叔母さんの方は折木のこと千反田の彼氏かなんかだと思ってた節があったっぽくて面白い。
それはそれとしてこれは折木のスタンス表明っぽくはある。でもそれよりも強く出てるのは千反田の話で、彼女の場合これまで依拠してきたものが完全にとは言わないまでも失われていることになる。
正直なところ古典部四人で1番弱いところ持ってるのが彼女なんだろうな、とか思ったり。
今回折木が出した結論は割と場当たり的で完全な解決にはならない。それは多分次巻以降の話。
次巻はいつ出るのか……? 2年位のうちにでてくれればなあと思ったり。
作品の感想を雑に書く記事です。いつもより物を考えてないです。
wizards soul
架空のカードゲーム漫画。なんかカードゲームが人気スポーツみたいな立ち位置に存在してるような世界のお話。別に世界がどうこうになったりはしない。いちおう恋愛漫画であるが個人的にはカードゲーマーあるあるが並ぶ愉快な作品。寝て起きてオンライン版のカードゲーム起動して気づけば夕方とか俺か。
全四巻。もうちょっと続けても良かった気もするけどちょうどいい気もする。難しいね。
大室家
ゆるゆりの大室家の人たちが主人公のやつ。なおゆるゆりは買ってない。何故買った。
内容そのものはゆるゆりよりもさらにゆるい感じ。可愛い女の子がきゃっきゃしてるやつ。そういうのが好きな人は多分損はしない。櫻子が好きな人も基本損はしない。
終電にはかえします
甘々と稲妻の作者でもある雨隠ギド氏の百合短編集。とりあえずかわいい。割と鞘当てっぽいのが多い感じなのでそういうのがお好きでしたらどうぞ。
ルネサンスとは何であったのか
唐突に世界史本。ルネサンスってそもそも何だったのか、どのような営みであったのか。どのようなところから来たのか。そしてそれぞれの国々でルネサンスが発生したのはなぜか、って感じの本。大変読みやすいのでおすすめ。
4巻買ったので。相変わらずの安定感がある。そしてなんか今回の高木さんは結構攻める。話が動くのかって期待と終わりに向かって動き出すような寂しさを覚える。あと周囲の男子生徒からどんな風に見られてるのかが描かれてたのは個人的にはよかったと思う。
青春のアフター 3巻
2巻の時点で紹介済みですがこの度3巻が出たので。
いやこれはすごいですよ。そもそもまことが歪んだ原因が最初の事件で、歪まなければ今のまことくんは無いわけだ。
その一方で、その歪んだ原因がなんとか立ち直った今になって追っかけてきてる。
まことは歪みを無理矢理に押さえ込んでたから状況の中でぼろが出る。
倉橋はぼろが出た状態の高校時代のまことであるべきだと考えてる。
さくらは状況がつかめなさすぎてまことくんを頼るしか無いからまことを頼らざるを得ないけど、まことはそんなことされようものならぼろがでてしまう。
みい子は歪みを押さえ込んでるまことくんが好きなわけだけど、それが崩れようとしてる。
まことは何かを間違えたわけじゃないのに状況に追い詰められるこの感じ。ぞくぞくしますね。今後が気になるったらない。