メモ帳と隔離所

ゲームとかラノベとかの話をするブログ

「夜行」雑感

 喜劇ではない森見はかなり久しぶり。これ以上なく堪能しました。
 
 学生時代、英会話サークルに所属していた彼らは鞍馬の火祭りを訪れる、その最中、メンバーの1人であった長谷川さんは不意に姿を消してしまう。それから10年ぶりに集まった英会話サークルの面々は再び火祭りに向かうが、その折にそれぞれが過去旅先であった不可思議な出来事を語り始める――。といった導入の……ジャンルはなんだろう、うまい言葉が見つからない。ホラー、というよりは怪談か。怖さというより薄寒さの方が強い。
 これまでも森見登美彦が見せてきた、幻想的な世界、あるいはここではないどこかに迷い入る様を描く手腕の凄まじさがこれ以上なく発揮されている。明らかな不自然さ、不気味さが漂う空間に放り込まれて惑う語り手が、気付けばすっとそちらに取り込まれていくことの気味の悪さ。何を見せられているのか分からず、理解も追いつかない覚束なさを感じたまま、次の語り手にバトンが渡されることの不可解さ。そんな奇妙な感覚がとにかく惹きつけてやまない。そしてこの果てには何があるのだろうと思わずにはいられなくなる。
 全ての過去語りは終わり、物語は現在に立ち戻る。迷い込んだ先で、刹那の幻想を見せつけた後の現実への帰還は実に寂しく、しかしながら美しい。
 その上らしい幕引きであるなあ、と。やっぱり好きな小説家だと思いを新たにした一作でした。
 

 

夜行 (小学館文庫)

夜行 (小学館文庫)

 

 

 
 
 

ここ3ヶ月くらいの読んだもの

だいぶ更新をさぼってましたね。というわけで雑多に、短めに。
ツインスター・サイクロン・ランナウェイ
 いつもあの手この手で面白いもの叩きつけてくる小川一水の新作。今回は爽快感に振り切っており、めくるめく変化する状況に軽快な会話が乗っかって終わりまで気分よく駆け抜けていける。おすすめ。売れまくって続編なり映像化なりしてほしいなと。
虚構推理
 もっと早く読んでりゃよかったのにね枠。アニメ見てから漫画と小説のスリーピングマーダーまで。シンプルに異なるものたちの側から描いた伝奇として楽しかった。鋼人七瀬の解法は実に好みのそれだったし、スリーピングマーダーの触れてはならないものに触れてしまったような冷え込みようも良いものだ。今後の新刊も期待。
アメリカ最後の実験
 やはり宮内悠介はこんな文体が際立つなと。なんと表現するのがいいか、内的世界に飛び込み続ける感覚というか。そしてそれがどういうわけか破茶滅茶に熱い。その上に気持ちがいい。なんともうまくいえないのが歯痒くもあるけれど。
よふかしのうた 3
 中学生くらいの夜への漠然とした憧れを物語に落とし込むのがあまりにも上手い漫画の3巻。今追っかけてる中では一番楽しんでるかもしれない。このゆるいアンダーグラウンドの心地よさよ。
9-nine-ゆきいろゆきはなゆきのあと
 完結おめでとうございます。中身自体はいつものかずきふみと言えばかずきふみ。期待通りのものがすっ飛んでくる。主人公とヒロインのテンポ良いやりとりを退屈することなく眺めていられるのは実に最高なことであるなあ。あとやっぱり主人公に声ついてるのがその辺の楽しさ上げてると思うところ。そういうのはもっと増えてもいい。あとはバッドの質も4作で最も良かったなと。
 一方でシリーズ全体の話になると、正直一本にまとめた方が楽しかったんじゃないかなって思ったりもしてしまう。どうしても一作目のせいで都が割食ってるし、あれで2作目以降いいかなってなってしまった人がいたら勿体ないなあとも思う。面白いんで2作目までとりあえず触ってみてほしい。
るいは智を呼ぶ
 テキストとキャラが思いっきりツボに入った女装男子もの。言うほど女装男子ものっぽさないというかそこ求めてやる感じでもないとは思うところだが。
 特筆すべきは厭世的でほどよく衒ったテキストである。それがはちゃめちゃにリズムよく繰り出されるものだからプレイ中は大体上機嫌であった。とはいえ途中のルートなんかは会話のキレが落ちたり単純にそこまで話が面白くなかったりとで欠けるとこがない作品ってわけではないけれど。茜子ルートがそれ以上に良かったのでプレイ後までは引き摺るもんではない。キャラが好みな上に細かいシーンも粒揃いであった。同盟がバラバラになるのは無理やり感あったがその後のあれが書きたいなら仕方ないな……ともなる
 
 だいぶ期間空いたのもあって書き出したものはかなりおすすめ度か好み度のどちらかが高い。それはそれとしてだいぶ会話の雰囲気で好みの作品決まるところだなと再認識。

読んだもの備忘録

 だいたい1月のまとめ。感想にすらなってないのもある。

 くっついた後のラブコメは大好きだが、書ける物語の幅が狭まるのもまあ事実なもので、その辺を個人的な問題と別キャラの恋愛模様書いて解決している。
 何が言いたいかって相変わらず面白い。おすすめ。
 
 Sky[Rain]
 フリーゲーム。もっと早くに見出してればよかった。
 2人の空間でなんかそれっぽいこと話をするやつすきじゃない? それだけを突き詰めてみたよみたいなゲーム。まあ一側面でしかないけど、一番好きな一側面だから。その意味では雰囲気ゲー。単にうまく語る言葉を見出してはいないけれど。
 
 
 フェチップル 1~4巻
 ホワルバ2でダメージ負ってた頃に頭空っぽにして楽しめるラブコメが欲しかった。そこに転がってきた。果たして目的は達成した。
 続き早く読みたいね。
 
 裏世界ピクニック 4巻
 相変わらず好みの要素集合体みたいな小説。誰彼構わずオススメはしないけれど今後もずっと買ってくだろうなってシリーズである。雰囲気はいつも通りだがキャラの関係性としては大変動。

 

 りゅうおうのおしごと 5巻~11巻

 多分5巻読んだのは二年半くらい前? 結構溜め込んだもんである。なんでこんなにほっといたんだろう。

 面白さは相変わらず。勝負どころのハチャメチャな熱さ。キャラを生かした泣かせどころ。巧妙なプロローグとエピローグにそれがもたらす心地の良い読後感。

  まあそうなるだろうなって思ったけれど、やっぱり一気に読んでしまった。そして色々言いたいことはあったはずだが、11巻の展開に全部かっさらわれてしまった。

 将棋がなければ近づきすらしなかった2人みたいな構図がそもそも好きだってのに、それを十全に描き切ったと言うべき出来で。

 手を放していても、二人はずっと同じ道を歩いていたんだと……今はそう思えるから。

 これに尽きるな、と。

 

 

おにぎりスタッバー 雑感

 いつも以上にとっちらかった文になりそうですが。それこそ雑感ということで一つ。

 というのも、読み終えてもまだどんな感覚で読むべきだったのかが掴めていない当作。面白かったのかそうでなかったのかもどうにも判然としない。好みかそうでないかはギリギリ好み寄りだけれど。それほど楽しめなかった部分もそれなりにある。一部の台詞回しとか。

 なんというかこう、全体的にふわふわしている。そうとしか言いようかがない。文体もキャラも展開も設定もふわふわしている。ここに絡め取られて最後まで読み切ってしまったところが少なからずある。癖になる人はかなり癖になるんじゃなかろうか。というかなった。気がついたら日付と場面が変わってたりとか結構ざら。割と後出しみたいな展開もあったりしたけれど、読み終わってみたらまあ別に良かったかなと。文にまとめてみると存外にこのラノベを楽しんでいたらしい。

 たまにこういうもの読めるからやっぱりやめられんよなあと。

 

 

 

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

 

 

十三機兵防衛圏 雑感

 とんでもないものが去年出ていたもんだと驚くとともに、見逃していたことがもったいなかったな、と。

 13人の主人公の視点で語られるADVパートの「追想編」と、機兵を操作して世界の危機に立ち向かうSLGパートの「崩壊編」を交互に進行する、といった体のゲーム。

 とかくシナリオの出来に驚かされ続けた。ジャンルとしてはSFジュブナイル。仕込んでいるものがあまりにも多く、何度してやられたと言ったことか。ばら撒かれた伏線を拾い上げ、別視点の物語が一つに収斂していく気持ちよさといったらない。複数視点型ADVの楽しさを余すこと無く、といった具合。いや本当にあらゆる要素を活用してくるので本当に見事。これぞゲームで物語を紡ぐってことなんだって言いたくもなる。

 次にキャラの見せ方だけれど、こちらも非常に見事。ADVパートの文章量は非常に多いわけではないが、細かなモーションやら、各種フレーバーテキストやらから拾える情報が大変に多く、大変に夢想の余地がある。ちょっと意図して描く量絞ってる感じ。

 あとはなんというか、遊んでいて退屈な時間がほぼなかったっていうのも割ととんでもないところかなと。小銭拾いはちょっと面倒だったなくらい。フラグの立て方わからないのはまあゲームジャンル的には仕方ないか。むしろ数えるほどしかそういうことなかったのかなと。

 戦闘は戦略SLG的。STRONGで進めていたが、ラスト付近のマップはリトライさせられたりもするくらいの難易度。シナリオと相まって、程よくギリギリ感味わえて楽しかった。合間合間の会話もグイグイ進めるモチベーションになる。強制クールダウンで強行突破するゲームみたいなところもあるが、まあ限界超えて動き続けるみたいなやつは格好いいから良し。

 

 

 キャラは正直みんな好きだけれど、特にってなると鞍部と薬師寺かな。こういう始まりからこんな結末になるの好きだよね。うん。いや好きなポイント自体はいくらでもあるのだが、書きすぎるわけにもいかないので。

 どうでもいい話を置いておくなら、プレイ中に「最果てのイマ」を想起してたけどだいぶ別物でした。多少構造かぶってはいるけれど。

 極力ネタバレを避けるとこんな記事にしかならないな……。何はともあれ全体的な完成度が高い名作でした。今年は幸先がいいな。

 

十三機兵防衛圏 - PS4

十三機兵防衛圏 - PS4

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: アトラス
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: Video Game
 

 

WHITE ALBUM2 感想

 Twitterではこのところ「胃が痛い」「助けてくれ」「報われてほしい」だの散々言ってたやつです。お目汚しを失礼。面白いけど不安定になる代物でした。割と劇物。それでいて幸福な時間を過ごさせていただきました。
 感想にはなるのだけれど、最終章は雪菜ルートしか終えていない。雪菜ルートに入ることは決めていたけれど、あれをみたあと即座にかずさのほうクリアしきることはできなかった。いつできるようになるかは正直わからない。
 それなりに前のゲームなため今更ではあるが、内容を凄まじくさっくり言ってしまえば三角関係もの。これまでの積み重ねと偶然が折り重なって集まった最後の文化祭のバンド。曲自体の完成度だったり、それ以外の色んな思惑だったりといったいった暗雲を漂わせながらも、これ以上ないほどに文化祭のステージは成功する。そんな最高に輝かしいシーンから始まり、あとは敷き詰められた爆弾が連鎖起爆していくのに戦々恐々としつつ、しかしその結末を、行き着く先を拝みたいと思わせる魅力の板挟みになりながら読み進めることになる、そんな暴力的なシナリオ。
 飛び抜けて特別なことは起こらないけれど、みなの優しさと、思惑と、弱さとが、ちょっと大きなイベントを発火材にしてとんでもない結果を引き起こす様はもう見事というしかない。読んでる側としてはたまったもんじゃあないけど。
 恐ろしいのは、たとえそれがきっかけだとしても、それが現在の苦悩のすべての元凶だったとしても、あの文化祭の輝かしさを絶対に否定したくないって心から思わされるところであろう。それ故にその先の展開は「どうしてこうなっちゃっうんだろう」と言いたくもなる。そのまま入っていった終章でキャラが増えたときはここから増やすのとちょっと思ったが、個別を見れば閉口もする。進んでほしい手順全部踏み越えてくのだよなあれ。個人的には小春ルートがサブの中では好みだがまあこれはキャラの好みな気もそこそこに。千晶ルートは面白かったしだいぶ凝ってたけどちょっとキャラが合わなかったというかなんというか。真理ルートは一番平和かなと思ってたらあれよあれよといった具合で、かなり楽しんでしまった。
 全体を通して、キャラの活かし方は実に見事。そもそも読んでいる時にこのジャンルで特定の誰かにヘイトが向いていかなかった時点で凄まじい。誰がとんでもなく悪いってことは全体を通して無く、特定の誰かに入れ込むとそういうものが見えてくるかもしれない。そういう意味で、雪菜が合わないと感じる人は多そうなものであると同時に、そこまでは織り込み済みなようで、劇中でキャラに感情移入できないって言われるなどの、散々な言われようで流石に笑った。
 でも冒頭で書いた通り、雪菜ルートしかクリアできていないのであるわけで。全編進めていて、なんかもう報われてほしいって気持ちが凄まじく、サブヒロイン個別ルートの泣き声のたびに余計にそんな気持ちが拡がってしまった。あの頑固で激情家で異様に芯が強くて果てしなくめんどくさい子と、お人好しが過ぎるせいでとんでもない状況作り出す上に移り気でちょっと脆いやつをどうやら相当気に入ってしまったようなのである。あまりにも間が悪すぎるんだよこの二人。あんなの3年も続けてたらそりゃクリスマスのシーンのような爆発もするわ。と思うし、春希も心折れるだろって思うところ。ようやくくっつくのかと思ったら中学生みたいなこと始めるし。
 そしてその果てのライブのやり直し。今度は、これこそはきっと前に進むものだと信じて。停滞した3年間を打破するものだと信じて。そしてまあようやく春希の眼前で泣けたところを見たあたりで感無量である。こんがらがりすぎたものをようやくほどき始めることができたんだなと。
 そしてcoda。輝かしい日々が残したものの最後の後始末。あの頃から前に進むことを選んだ彼らのやり残し。
 なんというか、お互いがお互いを頼りにできる関係になっていくのを見ている様がとても嬉しくて、あとやっぱり雪菜めちゃくちゃ強いよなあとか思ったり。ずっと絶妙なタイミングのすれ違いしてた2人が、ようやく上手く行くようになったのだと。
 あとずっと自分のこと棚に上げて喧嘩して欲しかったって読みながら思っていて、それが叶ったのも実に良かったと。
 というわけで、最高に楽しかったです。またどこかで頭からやり直したい作品。その時は全部やりきることができるのだろうか?

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 この辺も本当に好き。友人二人いいよね。
 

2019まとめ

よかったやつをさっくり感想でまとめるだけ。
 
 レイジングループ
 人狼モチーフサスペンスADV。シナリオの面白さで引きずり切られた傑作。疵がないとは言わないがそれを補って余りある出来。もっとやる人増えればいいのに。なんか損してるところ多いゲームではある。
 
 個別記事あり。優しくて甘い夢の話。テーマが好みにすぎた。現実との折り合いの話大好きだなあと思うところであるし、聖域的な場所としての夢の扱いも絶妙。キャラとしては景子が一番好きである。透引っ叩くシーン、流れは他ヒロインと同じではあるのだけれど台詞回しよかったよねえと。
 
 遠未来SFライトノベル。世界の第一人者が妖精さんなる生き物に移ったあとの人類のお話。展開される物語が非常にバリエーション豊か。ドラえもん風のはちゃめちゃ話であったり、移籍そうなんであったり、女学院ものであったり、パロネタ祭りであったり。
 まあでも際立ってたのは7巻以降であった。全力で奔走するわたしちゃんの有り様はかなりくるものがあったし、ロングパスな伏線回収も見事。あとはロミオが描くものやっぱり好きだなと。
 
 弩級ブコメでありクリエイター賛歌。映画に乗じて全部買ったりアニメみたり映画特典集めたりした。それほどまでにのめり込んでたのだなあと。
 7巻あたりから悶えっぱなしであったことを覚えている。気持ち悪い生き物製造機みたいなラノベであった。みんなも一緒に気持ち悪くなろう。
 彼らの今後に幸あらんことをと願うばかりである。
 
 まちかどまぞく
 アニメから入った日常もの。クセになる会話のノリと、やたら丁寧な話運びにしてやられてしまった。伏線回収の妙で読ませる4コマである。
 
 裏世界ピクニック
 実話怪談百合。どことなくクトゥルフTRPGリプレイ感もあるサバイバルホラー。洒落怖とか好きだった人は大好物じゃなかろうか。ホラーって書いたけどどこかワクワク感の方が強かったなぁとも、その辺り含めて気に入った。
 
 個別記事あり。SFボーイミーツガール。はい、ボーイミーツガールです。
 ちょっと読みづらいとかあったりするけれど、すべての過程からあの結末にたどり着いただけでもうこれ以上ないと思うのだ。
 
 天気の子
 個別記事あり。いやとんでもなかったなあ。これまで読んでたものが全部刃を向けてくる感じの映画であった。本当に作ってくれてありがとうって言いたくもなる。
 まあこんなところか。書きこぼしはあるかもしれないが。
 現在はホワルバ2進行中。なんでこんなことになっちゃったんだろうとか、頼むからなんとかしてくれとか、この丸戸史明とか言いながら進めている。助けてほしい。めちゃくちゃ面白い。