メモ帳と隔離所

ゲームとかラノベとかの話をするブログ

黄昏のシンセミア 雑感

 何で今までタイトルも知らんかったのかって程度には名作だった。通しで駆け抜けられた作品は結構久々であったし、ずっと楽しんだままそれを成せたのはひとえに完成度の高さに他ならないだろう。好みの部分を突かれたってのも無いとは言えないだろうが。伝奇もの要素がやはり好きらしい。特に日常描写が愉快だとなおさら。間違いなく名作ではあるところに、この辺丁寧にやってくれたから加点要素が多すぎて困っている。困ってない。

 

 あらすじとしては夏休みに田舎に帰った主人公が身体の随所が腐り落ちた怪物に襲われ、そこから村の成り立ち、あるいは自分自身の過去を探るといった塩梅。よくある話といえばよくある話。ただ、話の転がし方であったり、魅力的なキャラクター達がクリックをやめさせてくれない。一人一人のルート見ていても、他キャラの株あげるシーンが何かと含まれていて、よっしゃ次もやるかって気持ちにさせてくれる。
 総合してかなりいいとこの良作。基本的にはそれぞれの話のオチはちょっと弱いようにも思うけど、多分それがメインではあるまいし、どちらかといえば舞台装置としての利用に留めておいて、ヒロインとの語らいがメインの作品。ただ妹ルートが一線を画してる。大変良くない。他ルートをやってる時の感覚をなんとなく思い返すと、妹強いなあ、いろはルートついうるっときちゃったなあ、こういう話弱いんだよなあ。あと妹可愛いな……みたいな感じ、他ルートですらこんな感じであった。いやもちろん他のルートもよかったのだけれどな? 全体的にテキスト楽しかったし音楽も雰囲気出てたし。先生ルートなんでサブ扱いなのかわからんし。ただ妹が強すぎた。
 正直個別に関しても言いたいこと自体は色々とあって、その時点でひさびさになんか記事作ろーとか考えてたんだけど、絶対に強いだろうと思い最後に残しておいた妹キャラことさくやのルートが案の定強すぎて考えてたことぶっ飛んでしまった次第。なのでこっからはほとんどその話になります。今までも割とその話だったかもしれないが。
 いやこれ仕方ないでしょう。だってここだけ気合の入り方が三段階くらい違うのだもの。最初からバカップル顔負けだったところに輪をかけてバカップルになりおったせいで頬の筋肉緩みっぱなしである。その一方で馬鹿エロ一辺倒でもない。なだらかな階段を少しずつ登っていくような感覚で関係を詰めていくところが非常に好感が持てたし、そのへんも面白く書けていたのは素直に称賛もの。この手のくっつくまでの話って長すぎてもグダってめんどくさいなってなるし短すぎてもあっさりすぎん? ってなるし、扱ってる題材的にその辺がさらにシビアになるはずなのに、そういったものも一切感じさせなかった辺りは凄まじいバランス感覚である。実妹概論は未履修なので有識者の意見を知りたいところではあるが、関係の詰め方としてはこれ以上ないほどの出来であったのではないかと。
 展開ばっかり褒めているようだが、キャラ自体も大分気に入っている。シンプルにこの手のキャラに非常に弱い、信頼が突き抜けてるキャラが好きだと再認識させられたものだし。あとメールしたいがために主人公にめちゃくちゃ携帯買わせたがるあたりがめちゃくちゃ良かった。普通に好きな要素だらけのキャラを綺麗に描かれるとそれだけで名作判定出したくなるよね。共依存にも踏み込んでるあたりもグッド。
 トゥルーの話もしたいところではあるが、先にノーマルから。あくまでもノーマルだからあっさりはしているのだけれど、こんな結末も好き。待ってるのが隔絶だけだと知っていても突き進んだ成れの果てってことでどこか痛々しさはあるし、薄暗い部屋で過ごす最後のCGはえげつないほどの寂しさを湛えているわけだけれども、でもなんか奇妙な明るさもあって、どうしようもないけどこいつらなら大丈夫そうだぞってなる。
 で、トゥルーの方なんだけど、正直伏線残ったの拾うだけだと思ってました。はい。正直伝奇要素もおまけ程度だと思ってました。他ルートの解決めちゃくちゃあっさりだったし。練られてる割に扱い悪くてちょっともったいないなって。でもここの一番最後の展開やるために組んだのなら納得である。いやこの展開も好きなんだよ。このゲーム中核から細部までおれの好きなもので構成されてて流石に最高が過ぎる。過ぎた。実に名残惜しい。
 1つのルートの話ばっかりしてたけど、全体の完成度も本当に高かった。キャラよしテキストよし演出よし。トドメに締め方もよしといったところ。進めていて飽きさせない出来の作品。というと大したことないように見えるかもしれないが、果たしてこの域まで持って行っているゲームがどれほどあることか。何はともあれ、合いそうであれば気兼ねなく他人に薦められる程度の出来でした。個人的な良かった要素が多すぎて凄まじいことになってはいるが。
 
 だいたいこんなところだろうか。では、さくやルート2週目と小説版を読む作業に戻らせていただく。